次世代エネルギーへの挑戦
脱炭素に向けたサプライチェーン
現在、次世代を担うクリーンエネルギーとして、利用時にCO₂を排出しない水素が最も注目されています。水素を電気エネルギーに変換する燃料電池を活用したものや、水素を化学反応させることでCO₂排出量を削減する水素還元など、脱炭素社会の実現に向けた行動計画が各国に先駆けて発表されています。
水素は、これまでに石油精製、石油化学、製鉄所等の産業部門において利用されていましたが、近年では自動車やバス、船などの移動体の燃料電池として活用が期待されています。家庭においても、電気と熱を同時に作るエネファーム等に活用されており、より身近なエネルギーとして様々なシーンでの利用が実現しています。*[00][01]
[00]引用:環境省
[01]引用:環境省
各国の動き
日本が2019年に水素・燃料電池ロードマップを策定したのに続き、各国でも水素活用の動きが活発化し、2020年6月にドイツ、7月にEU、9月にフランスが方針を示しました。EUとしては、官民が連携できるようクリーン水素アライアンスを立ち上げ、2030年までに4300億ユーロ(約62兆円)の規模の投資を見込んでいます。
中国は現在、年間の生産量は約3300万トンあり、世界最大の水素生産国です。再生可能エネルギー発電設備の容量も世界一で、クリーンで低炭素の水素エネルギー供給には極めて大きなポテンシャルがあります。35年に水素エネルギー産業体制を形成し、交通、エネルギー貯蔵、工業などの分野をカバーする多元的な水素エネルギー応用生態圏を構築する方針を明確に打ち出しました。*[02]
[02]引用:経済産業省
国内では、2020年にトヨタ自動車、三井住友ファイナンシャルグループ、岩谷産業の代表取締役会長を共同代表とした水素バリューチェーン推進協議会が発足し、2022年5月19日現在、会員数合計299社が会員となっています。*[03]
2022年には、各企業が協力し、褐炭から製造した水素を液化水素運搬船で日豪間を海上輸送・荷役する実証試験を完遂しました。
[03]引用:内閣官房 水素バリューチェーン推進協議会の発足について
これまでの各国の流れに合わせ、カワテックスとしては、実際に水素を貯蔵し活用する水素容器の開発、製作に挑戦します。
カワテックスが手掛ける水素容器
カワテックスでは、水素を圧縮した後、貯蔵、運搬が可能な水素用圧縮容器に着目しています。水素を電気エネルギーに変換することで、工業用、家庭用に問わず多岐にわたり活用できます。容器の種類として、アルミライナーを用いたタイプ3と呼ばれる容器の製作を進めています。タイプ3は、継目のないシームレスなアルミニウム製のライナーにCFRPと呼ばれる、繊維強化プラスチックを巻いた容器です。鉄を用いたタイプ1、2に対して、軽量化を計っており胴部だけでなく、鏡部も強化した容器となっています。これまで、水素容器といえば、鉄を用いたタイプ1が主流でしたが、鉄鋼よりも軽量で、加工しやすいアルミニウムとCFRPを使うことで、タイプ1には対応できなかった分野にチャレンジいたします。*[04][05]
タイプ1:金属製容器
タイプ2:金属ライナー製フープラップ複合容器
タイプ3:金属ライナー製フルラップ複合容器
タイプ4:プラスチックライナー製フルラップ複合容器
タイプ5:ライナーのないCFRP製容器
[04]複合容器タイプ
[05]弊社が製作中のタイプ3複合容器
容量:300L
容器の長さ:約1500mm
直径(CFRPを含む):約700mm
重量:約200kg
タイプ3の特徴
POINT1 様々な用途に適用
トレーラ、蓄圧器、車載、航空産業、宇宙産業、列車など様々な用途に適用しています。
POINT2 鉄製より軽い
アルミニウム製は、鉄製より軽いためトレーラでの運搬や、移動できる貯蔵用に適しています。
POINT3 加工しやすい
タイプ3は鉄タイプに比べて、軽量で柔らかく製作が容易です。様々な大きさ、径の容器の製作が可能です。
世界最高水準の複合容器の製作に取り掛かる
複合容器専用工場設立
カワテックスは、次世代エネルギーである水素の産業活動が広がることに賛同しています。タイプ3複合容器の開発に着手しており、2022年中に水素複合容器の専用工場を3000㎡ほどの敷地を使って、北海道三笠市岡山工場に隣接して建設する計画です。
工場にはCFRPを巻き付けるワインディングマシンや、容器の形に金属を加工するフローフォーミングマシン、スピニングマシンを導入し、水素ステーションだけでなく、水素燃焼や、燃料電池用途として、幅広い水素アプリケーションの現場での採用を目指します。将来的には水素を大量輸送する輸送容器として展開いたします。
複合容器の開発を支える設備ラインナップ
タイプ3製作を手掛ける設備
カワテックスでは、ライナーの設計、製作、フィラメントワインディング、熱硬化処理といった工程から、タイプ3容器を製作します。設計と解析、製作、試験を繰り返し、設計の妥当性を確認します。所望の数値が得られない場合、設計の修正を行い得られるまでこれらの作業を繰り返します。
弊社に付帯のタイプ3複合容器製作主要設備
・有限要素法が可能な解析ソフト
・フローフォーミングマシン
・スピニングマシン
・フィラメントワインディングマシン
有限要素法(FEA)
有限要素法は、地盤や構造物を有限の要素に分割して、応力の分布や変形等を近似し、解析する方法です。静的応力だけでなく、耐震などの動的応力や、繰り返すことによる疲労応力などの解析を可能としました。任意の箇所に最大の力を想定し、解析することで設計の妥当性を確認します。
フローフォーミングマシン
4つのローラーで金属を押し当て、冷間加工を行う装置です。ライナーの任意の厚さを確保するために、スピニング加工を行う前段階の加工を行います。前後に移動し加工するシステムが備わっています。
円筒型のフローフォーミングプロセスにより、軽量化、製造工程の削減に期待でき、より精密性を高められた肉厚の制御に大きな可能性を見出しています。
スピニングマシン
鉄やアルミニウムなどの金属の熱間加工を行う装置で、回転した金属を外部から力を加え変形させます。金型の必要がなく、ガスの温度、速度を調整しながら肉厚の制御を行います。
フィラメントワインディングマシン
スピニング加工後、T6処理を終えたライナーにCFRPを巻いていきます。フープ巻きやヘリカル巻きなどがあり、専用ソフトによって巻き方をシミュレーションしておき、所望の巻き方になっているかを確認します。CFRPのフィラメントワインディングには、高度な技術が必要です。炭素繊維を正確に巻き付けるために、巻き角度や巻き速度などを調整する必要があります。また、CFRPは高温で硬化させる必要があるため、炭素繊維を巻き付けた後に熱硬化処理を行います。
タイプ3複合容器の製作の流れ
タイプ3複合容器は、複数の異なる材料を組み合わせた複合材料容器で、強度や耐久性に優れています。タイプ3複合容器の製作の流れには、以下のような工程があります。
CAD図の作成(モデリング)
有限要素法を用いた解析
アルミニウムの調達
ライナーの製作(フローフォーミング加工、スピニング加工)
T6処理
フィラメントワインディング
熱硬化処理
パンフレットダウンロード
ダウンロードは以下のリンクから行えますので、ぜひご活用ください。